開催趣旨

国際フォーラム開催趣旨:
サスティナブルコミュニティ・ツーリズムとは、直訳すれば、ツーリズムによってサスティナブルー持続可能なーコミュニティづくりをはかることとなります。すなわち、子供や孫たちの代でも心豊かな地域コミュニティとして存在し続けることができるように、海外の地域づくりに携わる人々とツーリズムのネットワークを組み、互いに訪問しあい、地域づくりのノウハウや、知恵、やる気を交換していこうという試みです。

今、国際的な状況では、市場経済最優先というグローバリズムが国境無く吹き荒れたその陰で、世界の色々な地方において、家族から次の家族へと営々として築いてきた、地域の伝統的な暮らしや、経済、文化などが荒廃していき、地域のコミュニティが存亡の危機に至っているという状況がみられます。
また、そのよりどころを失った人々の怒りや絶望が、世界や地域の安全な暮らしを脅かしています。

ひるがえって、ここ熊野では、高齢化や、過疎化、若い世代の流失、限界集落の散見、町の中心部の喪失や商店街のシャッター通り化など、経済的な疲弊に止まらず、このまま行ったら子供達の世代にはどうなってしまうのだろうという不安が地域に潜在しているようにも見受けられます。


日本国内で見れば、これは熊野に限らず、全国の地方はほとんど同じような状況にあるといえましょう。そして、その対策の一つとして、観光収入による地域の外貨獲得増加を目指した取り組みも多く見られます。しかし、これもまた同じように、全国で観光人口の熾烈な奪い合いを繰り広げる結果となっています。


このような状況を踏まえ、今回「サスティナブルコミュニティ・ツーリズム国際フォーラム 体験プログラム in熊野」では、各国の背景にある歴史や文化は違っていても、世界のいろいろな地方のコミュニティの抱える共通の課題としての「持続可能な地域づくり」というテーマに基づく経験や知識、意識を持っている方々に対象者を絞り、訪問交流の旅行の仕組みとネットワーク構築を目指しています。日本国内では、ニッチマーケットであっても、まだ競争が無く、海外では、新しい潮流と捉えられている旅行形態「サスティナブルコミュニティ・ツーリズム」を、今回熊野から提案し、将来のモデルとなるプログラムを発信していくことをねらいと致しております。


また、今回のフォーラムでは、持続可能な地域づくりのために、2つの側面に焦点を当てています。一つは、地域の景観、環境などや、経済・社会活動などの指標として数字にあらわれてくる地域コミュニティの眼に見えてくるものとしての課題の側面。2つ目は、眼には見えないけれど、地域コミュニティを支え続けている社会関係資本としての様々な「つながり」です。人と人とのつながりはもちろん、土地と人とが織りなした精神性、死生観、生活文化などを形作ってきた伝統や文化とのつながり、それを支えた世代間のつながり、地域の自然とのつながりなど、数字には表れませんが、コミュニティの崩壊を防ぎ、住み続けることの誇り、愛着をもたらしてきた重要な要素としての側面です。この眼には見えない要素を、サスティナブルコミュニティ・ツーリズムでは、歴史文化が違うからこそ、共通する課題を解決に導く重要な鍵と位置づけ、訪問者への体感や互いのフィードバックによる新たな地域資源としての価値の再発見をもたらすことも目的としています。 このフォーラムをきっかけとして、「熊野」から発信する新しい移動交流形態のモデルとして、サスティナブルコミュニティ・ツーリズムのネットワークが広がり、地域コミュニティの自立的発展という目的を持った多くの海外からの訪問者が熊野を訪れ、地域の様々な方々と啓発し合うことや、知恵やノウハウの交換の仕組みができること、そして各国の土地と人とが織りなして来た、心豊かな結びつきとその継承の復活につながる第一歩となればと願っております。

かつて、ここ熊野の地は、信仰という特別の目的を持った多くの巡礼者達が目指し、集った地でありましたように・・・。