2010年‐国際フォーラム
- ゲストスピーカー
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Bindu Hewa Rohan Induka(インデュカ氏)
スリランカ農業省地域職員略歴
- キャンディのPeradeniya大学農業学部卒業。
- 農業省の農業研究および生産性関係の職員。
- 共同農業のための農業省地区コーディネーター。
- 自作の詩で受賞。
- 地区の地域支援協議会の会長
- 地域支援組織「Namal Gunawardena」財団の企画責任者
専門事項・活動内容
地域支援組織「Namal Gunawardena」財団の企画責任者として活動し、スリランカの乾燥地帯における僻地の農業および農村の家族、文化、習慣などの研究にも従事してきました。専門は農業分野で、Kandy圏域の農業に、持続可能な開発プログラムを適用していくことにより、コミュニティの健全な次世代への産業として継承されるよう、啓発活動を長期に渡って行なっています。熊野の皆様へ
「キャンディ市におけるサステイナブルツーリズムの重要性について:伝統・文化・生活様式・信仰・エコロジーの側面から」という演題でお話させて頂きます。
スリランカでは伝統的なコミュニティ維持されている一方で、内戦の悲劇によりコミュニティでの民族的対立が進行し、コミュニティを継承していく機能が崩壊して来ている現状もあります。今回のサスティナブルコミュニティツーリズムの概念と手法が、コミュニティ外の他者を巻き込むことにより、コミュニティの住民に再び自尊の念と郷土愛をもたらし、そこから、次の世代のコミュニティのリーダーが育っていくことが今とても大切だと考えております。またスリランカでのサスティナブルコミュニティツーリズムの潜在資源としては、歴史や伝統だけでなく、現在実践されていることとして、アユルベーダや仏教に基づく様々な癒しの療法や瞑想法、健康法なども国際的観点から見直されるべき資源だと考えています。
また、主たる産業としての農業に、エコロジーの視点から取り組んできた者として、人々の暮らしとコミュニティが持続可能であるための重要な要素として、有機農業の普及支援や地域コミュニティ生産物のより良い販売システムの構築方法などについての議論ができればと思います。 -
Gary Green(ゲーリー グリーン氏)
サンタクルーズ郡観光振興協議会(CVC)/マーケティング統括責任略歴
- カリフォルニア州立大学サンタクルーズ校卒業
- 南カリフォルニア アネンバーグ大学にて修士
- ビーチにある100年続く遊園地のイベントホールのマネージャーとして、様々なイベントプロモーションを行なう。
- サンタクルーズ郡の観光振興を統括する非営利組織Santa Cruz County Conference and Visitors Council (CVC)の共同マーケティング統括責任者
専門事項・活動内容
過去30年以上に渡り、販売促進のプロモーション分野での経験を持ち、特に共同マーケティングや広告・広報代理事業、ブランド戦略の立案実施など多様な分野での実績を活かし、圏域への訪問人口増大のための共同広報活動や郡観光振興協議会のパートナーメンバーの拡充業務を担っています。特にゲーリー氏の特筆すべき点としては、ビジネスエクスポからスポーツ・芸術までいろいろなイベントの仕掛け人として活躍してきたことです。またゲーリー氏自身がラテンバンドのパーカッション ミュージシャンですので、多くのミュージックイベントのプロモーションを手がけています。
熊野の皆様へ
今回は、私の長年の専門分野であります、観光も含めた様々なジャンルのいわゆる販売促進とメディア活用の手法を例に取り、持続可能な地域づくりとの関係についてお話したいと思います。サンタクルーズ郡の観光は、20世紀初頭から、木材搬出の為の鉄道により、サンフランシスコ近郊からの訪問者で、隆盛を極めましたが、時代は道路から空路の時代に移り、一時斜陽を経験しました。けれども、現在は、年間直接観光収入が500億円に上るまでに挽回し、それは14億円の税収をもたらして地域の社会基盤に貢献し、また間接収入も含めれば、この地域への総収入は住民のスモールビジネスの存続だけでなく、文化や芸術への振興、景観や環境の保全にも波及しています。ここへ至る過程で最も重要だった事として、観光産業に直接関係するセクターの為の観光ではなく、サンタクルーズのコミュニティ全体への波及と、コミュニティ全体で訪問者にサンタクルーズ・ユニークネスのホスピタリティを体験してもらおうというコンセンサスづくりの作業を長い期間をかけて続けてきたことなどにつきましても、お話したいと思います。 -
Jennifer Karno (ジェニファー カルノ氏)
サンタクルーズ市経済開発・再開発担当者
専門事項・活動内容
ジェニファー氏は、過去20年に渡り、多くの企業や地域のNPOグループなどが手がける様々なイベントのプロデューサーであり、良き仲介役を果たしてきました。昨年、サンタクルーズ市は国際自転車競技連盟UCIのHC2.2のステージレースとして有名なツアー・オブ・カリフォルニアの誘致を決定しました。このレースのサンタクルーズ・ステージで、今年度も含め2回にわたり、ジェニファー氏がその実際上の全ての運営責任者として、地域を巻き込み、その成功へと導きました。このイベントは費用対効果としては、短期的にはマイナスですが、長期的視野にたってバランスするように取り組むべきものとの位置づけです。
また、ジェニファー氏は現在サンタクルーズ市の経済開発および再開発部門の職員として、特別なプロジェクトやエコツーリズムの概念を普及させる任に当たっていて、エコツーリズムの認証に関する仕事や、モントレー湾ジオツーリズム運営委員会のメンバーとしても活躍しています。
また、彼女はミュージカルやジャズ、ワールドミュージックのヴォーカルとしてステージに立ってきました。熊野の皆様へ
今回、私はサンタクルーズでの様々なイベントの展開と地域づくりとの関係やそれについての、市民の草の根の活動と行政との協働の事例などをご紹介したいと思います。また、若者たちを、自発的に地域づくりの活動へと促進する、緩やかで楽しい集団「サンタクルーズ・ネクスト」では、様々な親睦を兼ねたイベント開催を通じて、その中に、コミュニティの直面する問題や、解決へ向けての討論などをちりばめ、若年層の流動人口を、地域づくりの主体的存在へと意識を変える運動を展開していることも、私自身そのメンバーとしての経験からお話させて頂きます。また、この集団から生まれたビジネス創出施設もご紹介したいと思います。それは、企業誘致より自立自助の若き企業家をたくさん作り出し、シリコンバレーに移動しなくてもサンタクルーズで仕事を作り出すことができるようにと創設された「ネクストスペース」です。これは、行政のお金を一切使わず、次の時代のサンタクルーズの経済活動を担う若者たちを作り出すコミュニティとなってきていて、その中では、既に成功した企業も出始めております。
また今回、地域コミュニティにとっての大きなイベント開催の意義とサンタクルーズでのエコツーリズムの経験から、サスティナブルコミュニティツーリズムの可能性を探りたいと思います。 -
Cynthia Mathews(シンシア マシュー氏)
サンタクルーズ市前市長・現市議会議員略歴
- 地域改革市民会議1974-1982
- 中心商店街ダウンタウン地震復興委員会
- サンタクルーズ郡観光産業振興協会役員
- 中心商店街ダウンタウン管理機関役員
- モントレー湾海洋遺産指定実行委員会委員
- 市、郡図書館共同経営拡大委員会委員
- アドビー連携事業委員
- 経済開発協議会委員
- サンタクルーズ商工会議所役員
婦人貢献年間賞
ローカル・ヒーロー1985 サンタクルーズ・エクスプレス
サンタクルーズ郡婦人審議委員会賞1988
中心商店街ダウンタウンの友賞1998
「ウーマン・オブザイアー」サンタクルーズ商工会議所2000
「ウーマン・オブザイアー」民主党婦人部会1997
家族計画カリフォルニア州協同推進者2005専門事項・活動内容
サンタクルーズ市長を3回、市議会議員として17年の長期にわたり、市行政のリード役として、又草の根の地域づくりの活動家として働いてきました。私たちの町には、いわゆる「サンタクルーズ・ユニークネス」と呼ばれる、他の町とは違う、独特な町の雰囲気を守っていこうという、住民の暗黙の合意のようなものがあります。そんな合意を大切に、地域の独自性を維持しながら、他に頼らない自立自助を目指してきました。 その間、市民の自発的な活動の掘り起こしと行政とのパートナーシップの橋渡しを支援して、持続可能なコミュニティづくりに取り組んできました。その活動範囲は、文化政策、観光・生涯教育、経済開発など広範囲ですが、特に地震で一度壊滅した、中心商店街ダウンタウンの商店街を今日の隆盛に導いたことは、成功事例の一つです。また、現在最も力を入れていることは、若い世代から、町づくりのリーダー達を輩出させ、その活躍の場を提供していくことです。
熊野の皆様へ
新宮への訪問は、これで3度目となり、毎回わくわくしています。今回の講演では、まずサンタクルーズという町の概要やコミュニティのアイデンティティを形成してきた道筋と町の価値をどうやって高めてきたか、ということをお話したいと思います。またその過程で、自然や環境を守る意識とその市民活動が大きく寄与したこと。それから町全体が芸術、音楽、演劇、美術や、最近ではITの技術も含めた地域の創造性を潜在力として育ててきたこと。また大きな特徴として、市民が家でじっとしているのではなく、アウトドアやスポーツなどのイベントを通じて、常になにか外向けに働きかけている活発なライフスタイルが定着していることがあります。それから忘れてならないこととして、地元で商売を営み、子供を育て、税金を負担し、コミュニティの一員としての責任を担っている個人商店などをステッカーなどで段階的に識別して、優先的にそこで買おうという「Think Local First」運動や、有機農業家の子供たちが大学を卒業し、親の農業を継ぎたくなるだけの収入を得られる値段で消費者が買うことによって、消費者の子供たちも、将来安全な食べ物を買い続けることができるようにという「Buy Fresh Buy Local」活動の展開など地域コミュニティの中で経済を循環させて、自立した経済圏を作ろうという運動についてのお話もしたいと思います。そしてこのような過程から生じた様々な市民活動の促進例とその結び付けによる相乗効果、また行政との協働の手法と事例もご紹介させて頂きます。また、今回の講演が、サスティナブルコミュニティツーリズムの可視の地域資源として現れてきたもの、不可視の資源としての文化や芸術など、サンタクルーズのまちづくりの例をはじめとして、熊野やスリランカと分かち合い、また私たちも学ぶことができればと願っています。 -
Hettiarchchige Pemachandana(チャンダナ氏)
CPC Travel代表略歴
- Kelaniya大学の科学専攻卒業
- CPC Travels 株式会社(PVT)の常務取締役
- 統計国勢調査庁の元統計オフィサー
- Nawana大学職員
- 仏教教育研究所のスタッフ会員
専門事項・活動内容
地域開発の為の統計調査庁の研究の管理や、津波被害後の社会心理学的影響調査などに携わってきました。現在は、観光を通じたコミュニティ再生を目指しています。特に仏教の要素を取り入れた研究・研修のツーリズムを展開、アースウオッチのサステーナブル ツアーと連携し、スリランカでの受け入れ活動も行なってきました。熊野の皆様へ
キャンディ市は、熊野より16年も早く、仏教の「聖地キャンディ」の名前で、ユネスコ世界遺産に登録されております。人々の生活の規範の中に、伝統や宗教の儀式を重んじること、眼に見えない、信仰に裏打ちされた死生観が存在し、大家族制の中の家族のつながりが地域コミュニティにまで広がった、相互扶助の意識を保持してきました。熊野は、「霊場と参詣道」、キャンディは「聖地キャンディ」が世界遺産の登録タイトルであり、ともに神仏習合と上座部仏教の信仰が基盤にあり、また新宮市も熊野圏域の中心都市であり、周辺地域の過疎と高齢化の問題を持ち、キャンディ市も中部スリランカの州都であり、周辺地域の低教育水準と貧困の問題を持っていることなどの共通点があり、シンハラ王朝の古都として、熊野と同様に歴史文化資源が豊富に存在しています。
今回、スリランカでのツーリズムにおける精神性、特にKandyのコミュニティに深く根ざした仏教の精神性に関する体験をもたらす新しい観光形態としてのサスティナブルコミュニティツーリズムの可能性と、対応するスリランカの潜在的資源についてお話をさせて頂きます。スリランカの場合、地域づくりの最終的なゴールとしては、地方の農村コミュニティの所得水準を上げて行く事であり、またそこに住む人々をより良い暮らしへ向かって進んでいくようにすることです。 -
Dave Vincent (デイブ ヴィンセント氏)
LSCC理事長略歴
- 「リーダーシップ・サンタクルーズ・カウンティ」理事長
- アプトス商工会議所会頭
- 元カリフォルニア州立公園管理局サンタクルーズ郡最高責任者
- 「2007マン・ オブ ザ イアー」受賞(アプトス商工会議所
専門事項・活動内容
2007年まで、32年間の大半をカリフォルニア州立公園全般業務の責任者を歴任し、いわゆる「レンジャー」を率いて、自然体験エリアの保全と活用、市民活動との協働などを図ってきました。現在は「リーダーシップ・サンタクルーズ・カウンティLSCC」理事長として、地域の現在と、将来のまちづくりに携わるリーダーの育成プログラムの学校を運営しています。これは、地域内のあらゆる階層、人種、職業、そして古くから住み続けている人々と、新しく移り住んできた人々、若い人から、退職したお年寄りなど、地域を構成する多様な人々、普段出会えない人々が出会う機会を提供し、意見を交換し、解決への共同作業を通じて、自分の中にある、今まで気がつかなかった、地域づくりへのやりがいを見出し、まちづくりに積極的に関わっていく人材を育てる学校でもあります。
熊野の皆様へ
サンタクルーズでは、1980年代の不況の中で、外からの経済変動に左右されないよう地域の安定を保つ為には、何をすればよいかということが課題となっていました。それには、このサンタクルーズ地域を構成する、人種、性別、年齢、職業など様々な多様性を代表し、自分で未来を作り出す創造性を持って、地域の中でリーダーとなるような人材を育てていくことが必要だとの一致した意見からこの地域づくりのリーダー養成学校としての機関、LSCCが設立された経緯があります。今回このフォーラムでは、地域内の現在と、将来のまちづくりのリーダーを育てるプログラムの詳細と、地域のコミュニティにとってのその重要性をお話致します。また、永く州立公園の責任者として働いた経験から、自然体験エリアの持つさまざまな地域の価値の向上の方法とその事例、またその波及効果や可能性などもご紹介させて頂きたいと思います。また特にサスティナブルコミュニティツーリズムの一つの核となる地域資源としての自然環境とコミュニティの地域住民とが共に存続可能な技術やノウハウなどについてもお話できればと願っております。